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れきたん歴史人物伝
れきたん歴史人物伝は、歴史上の有名人の誕生日と主な歴史的な出来事を紹介するコーナーです。月に一回程度の割合で更新の予定です。(バックナンバーはこのページの最後にもまとめてあります)


5月号 2010年5月31日更新

【今月の歴史人物】
種痘法の父
ジェンナー
1749.5.17〜1823.1.26

今月号のイラスト
ジェンナー
天然痘を予防じぇんなー。
(C) イラストレーション:結木さくら


5月の主な誕生人物
01日 円山応挙/江戸時代の画家
02日 エカテリーナ二世/ロシア女帝
03日 マキァベリ/政治家、歴史家
04日 西郷従道/政治家
05日 小林一茶/江戸時代の俳人
05日 キルケゴール/哲学者
05日 高野長英/医師、蘭学者
05日 マルクス/経済学者
06日 フロイト/精神医学者
06日 ロベスピエール/革命家
07日 本居宣長/江戸時代の国学者
07日 ブラームス/作曲家
07日 美濃部達吉/法学者
07日 ブラウニング/詩人
08日 トルーマン/政治家
09日 バリー/劇作家
10日 モンジュ/数学者
10日 ブライス/法学者、政治家
11日 ダリ/画家
11日 ファインマン/物理学者
12日 ナイチンゲール/看護婦
12日 武者小路実篤/小説家
13日 マリア・テレジア/オーストラリア女帝
13日 カルノー/軍人、政治家
14日 北条時頼/鎌倉幕府五代執権
14日 ファーレンハイト/技術者
14日 オーウェン/思想家
15日 北条時宗/鎌倉幕府八代執権
15日 メッテルニヒ/政治家
15日 キュリー(ピエール)/物理学者
15日 市川房枝/政治家
16日 間部詮房/江戸時代の側用人
16日 ヒューズ/発明家
17日 ジェンナー/医学者
17日 サティ/作曲家
17日 安井曾太郎/画家
18日 ラッセル/数学者、哲学者
19日 西田幾太郎/哲学者
19日 フィヒテ/哲学者
20日 バルザック/小説家
20日 ミル(ジョン・スチュアート)/経済学者、思想家
21日 デューラー/画家
21日 ルソー/画家
22日 ドイル/小説家
22日 ワグナー/作曲家
22日 坪井逍遥/小説家
23日 リンネ/植物学者
23日 リリエンタール/技術者、発明家
24日 ビクトリア/イギリス女王
24日 ハチャトゥリアン/作曲家
25日 エマーソン/哲学者、詩人
25日 チトー/政治家
26日 中村正直/教育者
26日 ガイスラー/技術者
27日 イブン・ハルドゥン/歴史家
28日 崇徳天皇/第75代天皇
28日 ピット(小ピット)/政治家
28日 ギヨタン/医師
29日 林鵞峯/江戸時代の儒者
29日 ケネディ/政治家
30日 林房雄/小説家
31日 ホイットマン/詩人

今回ご紹介するのは、イギリスの医師・ジェンナー。種痘法の確立という非常に大きな業績を残し、偉人伝などにもよく取り上げられる人物です。今回は、そんなジェンナーの生涯を、彼が立ち向かった天然痘とはどんな病気だったのかということも合わせてご紹介しましょう。

医師ジェンナー
ジェンナーは、英国のグロースターシアという地方の、牧師の家に誕生しました。
幼い頃から学問を行い、やがて医師を志し、ハンターという高名な医師のもとで医学を学び、医師となりました。ジェンナーには博物学者としての一面もあり、クック(探検家。キャプテン・クックの名で知られる)が持ち帰った標本を整理したり、鳥類や地質の研究も行っています。
とはいえ、ジェンナーが本格的に博物学の道に進むことはなく、医学を修めると、故郷に戻り開業医となりました。
そして、地元で医師として活動する中、ジェンナーは、当時猛威をふるっていた天然痘の予防法についての考えを持つようになるのです。

天然痘とは
ところで、「天然痘」というのはどういう病気だったのでしょうか。これは、ウイルスによってかかる伝染病です。感染した人は全身に発疹ができ、高熱が出て、時には死に至ります。致死率は非常に高く、20〜40%、あるいはそれ以上あるとも言われます。唾液などによって容易に感染することからたびたび大流行し、人々を苦しめていました。天然痘という病気は、人類にとって長年の強敵だったと言えるでしょう。
しかし、そんな恐ろしい天然痘でも、全くわけが分からない病だったというわけではありません。それまでに知られていたこともいくつかありました。
まず、一度天然痘にかかった者は再びかかる可能性はほぼないということです。医学の言葉で言えば、強い免疫が得られるということです。その特徴を利用し、天然痘患者の水疱から取った液(人痘)を健康な人に植え付け、軽い天然痘を発症させて免疫を得るという予防法も行われていたようです。とは言え、軽くかからせるはずだったものが重症の天然痘になってしまうケースも少なくなく、危険ととなり合わせの予防法でした。
もう一つ、天然痘について農村部を中心に知られていたことがありました。それは牛の天然痘、すなわち「牛痘」にかかった者は、天然痘にかからないということでした。牛痘というのは牛にとっては死病なのですが、人にかかった場合はほとんど症状の出ない病気です。ジェンナーが着目したのは、この牛痘でした。この牛痘を利用すれば、天然痘の予防ができるのではないかと考えたのです。

種痘法の構築
やがてジェンナーは自分の考えを試す機会を得ました。地元の乳搾りの女性にできた牛痘から液を採り、それをジェームズ・フィップスという8歳の少年に接種してみたのです。そして、それからしばらく後、今度はその少年に人痘を接種しました。少年は天然痘を発症しませんでした。つまり、天然痘に対する免疫ができていたということです。
ジェンナーはこの結果をもとに実験を繰り返し、牛痘接種が天然痘予防に効果を持つことを確かめ、これについての論文を発表しました。1798年、ジェンナー49歳の年のことです。
しかし、初めはこの論文は、医学界にはほとんど相手にされなかったといいます。新しい治療法に対する懐疑もあったでしょうし、「牛のものを人に植える」という行為そのものが、当時の宗教観や倫理観に照らして受け入れられがたかったためともされます。
しかし、ジェンナーの種痘法は実際に効果があり、それにまさる説得力はありませんでした。普及の初期には知識や経験の不足から来る失敗もありましたが、やがてジェンナーの種痘法は大きく広まってゆくのです。
むろん、ジェンナー自身も種痘法の普及に努めました。結果、種痘法は医学界より先にイギリス議会に受け入れられ、ジェンナーの活動には補助金も下りました。種痘のための施設も作られました。やがてジェンナーの業績は、医学界にも認められるようになりました。
種痘法の成功を見たジェンナーが亡くなるのは、1823年のことです。この頃にはジェンナーの偉業は完全に認められ、国家的な人物として扱われていたようです。また、死の直前の時期まで、博物学の研究も続けていたと伝わります。

ジェンナー以後
ジェンナーの種痘法は、日本にも伝わっています。当時の日本は鎖国状態ではあったものの、種痘法開発から間もない19世紀の初頭には、既に細々とその内容や方法が伝わり始めていました。ただし、その時点では、心理的な理由、技術的な理由の両方が障害となり、国内に広く普及することはありませんでした。種痘法が日本で実際に広まり始めたのは19世紀の半ば、日本人医師・楢林宗健とオランダ人医師・モーニッケの二人が種痘に成功してからだとされます。
これ以後、各地の医師の必死の尽力によって、日本での種痘普及は加速しました。これらの医師の中では、福沢諭吉の師であり、大坂に種痘施設をつくった緒方洪庵の名がよく知られています。
むろん、日本以外の国々にも、種痘法は力強く広まってゆきました。これによって天然痘はかなりの確率で予防できるようになり、死の運命にあるはずだったたくさんの人々の命が救われたものと考えられます。
なお、今からおよそ30年前の1980年には、ついに天然痘の根絶宣言がWHOから出されるに至っています。ジェンナーが種痘についての論文を発表してから、182年後のことでした。

種痘法の発見者
しばしばジェンナーは「種痘法の発見者」と表現されます。しかし、この表現はやや正確ではないかも知れません。人痘の接種という形での天然痘予防はジェンナー以前にも行われていましたし、牛痘が天然痘と関わりのあるらしいことも、一部では知られていたのですから。
むろん、ジェンナーが牛痘に着目したことは素晴らしいひらめきだったでしょう。しかし、彼の業績は、それだけでは生まれませんでした。そのひらめきを実験によって確かめ、効果を証明し、手法を確立したことこそが、彼の偉大な部分だったように思われます。

 
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