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れきたん歴史人物伝
れきたん歴史人物伝は、歴史上の有名人の誕生日と主な歴史的な出来事を紹介するコーナーです。月に一回程度の割合で更新の予定です。(バックナンバーはこのページの最後にもまとめてあります)


6月号 2010年6月30日更新

【今月の歴史人物】
一世一代の下交渉
山岡鉄舟
天保7(1836).6.10〜1888.7.19

今月号のイラスト
山岡鉄舟
浪士組、江戸へてっしゅ…いや引き上げよ。
(C) イラストレーション:結木さくら


6月の主な誕生人物
01日 カルノー/物理学者
02日 エルガー/作曲家
    サド/小説家 
03日 佐佐木信綱/歌人
    デュフィ/画家
04日 ケネー/経済学者、医者
05日 ケインズ/経済学者
    スミス/経済学者
06日 ブラウン/物理学者
    ベラスケス/画家
    マン/小説家
07日 梅田雲浜/江戸時代の儒者
08日 シューマン/作曲家
    カッシーニ/天文学者
    広津柳浪/小説家
    土岐善麿/歌人
09日 滝沢馬琴/江戸時代の読本作者
    スティーブンソン/技術者
    山田耕筰/作曲家
10日 徳川光國/江戸時代の水戸藩主
    多能村竹田/画家
    山岡鉄舟/幕臣、政治家
11日 シュトラウス/作曲家
    川端康成/小説家
12日 花井卓蔵/弁護士
    キングスリー/小説家
13日 ヤング(トマス)/物理学者、医学者、考古学者
14日 クーロン/物理学者
15日 空海/平安時代の僧
    グリーグ/作曲家
    佐藤信淵/農政学者
16日 荻原井泉水/俳人
17日 クルックス/物理学者、化学者
    ストラビンスキー/作曲家
18日 モース/動物学者
    ラディゲ/詩人
19日 パスカル/数学者、物理学者、哲学者
    太宰治/小説家
20日 ホプキンズ/生化学者
    白河天皇/第72代天皇
21日 サルトル/哲学者、小説家、劇作家
22日 フンボルト/言語学者、政治家
    田中義一/政治家、軍人
23日 水野忠邦/江戸時代の老中
    林述斎/儒者
    三木露風/詩人
24日 ビアス/小説家、ジャーナリスト
    ビアス/作家
25日 ガウディ/建築家
26日 木戸孝允/政治家、幕末の志士
    ケルビン/物理学者
    バック/小説家
27日 小泉八雲/文学者
    ケラー/福祉活動家
28日 ルソー/思想家
    ルーベンス/画家
29日 黒田清輝/画家
    サン=テグジュペリ/小説家
30日 サトー/外交官

今回取り上げるのは、幕末人物の一人、山岡鉄舟です。坂本龍馬や三傑ほどの知名度はなく、言ってみれば「次点」の英雄ですが、いかにも武士らしい剛直な人柄は人気があります。剣や書の達人としても知られる鉄舟の生涯を見てみましょう。

裕福な暮らしが一転
山岡鉄舟は、天保7(1836)年6月10日、旗本の家に誕生しました。600石取りといいますから、かなり裕福と言っていいでしょう。鉄舟は少年時代から直心影流や北辰一刀流の剣術を学び、また、書もたしなみました。文字通りの文武両道です。なお、このころの鉄舟は、飛騨に暮らしていました。父は旗本でしたが、その任地が飛騨になったからです。
しかし、鉄舟が十代後半のころ、両親が相次いで亡くなるという不幸に見舞われます。鉄舟は江戸へと戻り、大変な貧乏暮らしを余儀なくされることになります。しかし、その間も剣術修行は止めなかったといいます。

政治活動に身を投ず
そんな鉄舟でしたが、二十歳ごろに身の回りの状況が変わります。まず、結婚という出来事がありました。鉄舟は剣術だけでなく槍術も学んでいたのですが、その師は山岡静山といいました。その静山が亡くなったため、静山の弟に頼まれ、静山の妹と結婚して山岡家を継いだのです。実は鉄舟の姓が山岡になったのはこの時で、それまでは小野という姓でした。
また、尊王攘夷の運動に深く関わっていったのもこの頃です。当時は日米和親条約締結から間もない時期で、尊王攘夷思想が巷の武士の間で流行していました。鉄舟も、尊王攘夷の志士・清河八郎らとともに政治組織を立ち上げています。

浪士組の挫折
この清河という人物は、相当な策士です。この頃、清河が中心となって作り上げた「浪士組」という組織があります。これは、将軍の徳川家茂が上洛する際、その警護を行う目的で作られたものでした。つまり、幕府の組織です。この浪士組の幹部をつとめていたのが、ほかならぬ鉄舟でした。
ところが清河は、京都に到着した浪士組を尊王攘夷の尖兵として使おうとします。しかし、当時の幕府は米国と条約を結んだくらいですから、尊王攘夷など思いも寄らぬことです。清河のやろうとしたことは、幕府の組織を使って、幕府の方針を邪魔するも同然のことだったのです。このことは幕府に危機感を抱かせ、浪士組はすぐに江戸へと呼び戻されました。
その後、清河は江戸でも浪士組を動かして活動しようとしますが、まもなく幕府の手の者に暗殺されています。そして、浪士組幹部である鉄舟にも謹慎の処分が下ってしまうのです。
ちなみに、この浪士組が江戸へ帰る際、それを拒んで京都に残留した浪士たちがいました。それが芹沢鴨や近藤勇、土方歳三といった面々で、彼らがのちに新選組となるわけです。
清河の暗殺後の鉄舟は剣の修行に没頭したようです。また、当時の剣術と深く結びついていた禅にも打ち込みました。

一世一代の下交渉
そんな鉄舟が、幕末史の大舞台に再び表れるのは、内政の混乱もきわまった慶応4(1868)年のことです。
慶応4年とは、ついに官軍と幕府軍が激突し、戊辰戦争が開始された年です。その緒戦、鳥羽伏見の戦いで幕府軍は惨敗しました。官軍はさらに攻勢を強め、ついに江戸への総攻撃をうかがうまでに押し込みます。
このままでは江戸が壊滅すると、和平の方法を模索したのが勝海舟です。海舟は官軍の参謀であった西郷隆盛との直接交渉をめざしました。その下交渉を任されたのが、山岡鉄舟だったのです。
ちなみに、鉄舟を推薦したのは高橋泥舟という人物です。泥舟は鉄舟の義理の兄にあたります。すなわち、鉄舟の先生・山岡静山が亡くなり、鉄舟を山岡家の婿にと望んだ「静山の弟」こそが、この高橋泥舟です。人格者で武術にも長けていたと伝わり、当然、鉄舟とは親しく接していました。
実は、西郷との交渉に適任とされたのは、はじめは泥舟だったのですが、この時の泥舟は、朝廷に恭順の意を示すために謹慎生活を送っていた将軍・徳川慶喜を警護する役目を負っていました。そのため、泥舟は将軍のもとを離れることがかなわず、それならということで鉄舟を推薦したという流れでした。
さて、命を受けた鉄舟は、官軍のど真ん中に飛び込んでゆきます。この表現は誇張でもなんでもありません。官軍の陣に到着した鉄舟は、大声で名乗りを上げて陣中を堂々と歩き過ぎたと伝わります。
こうして、鉄舟と西郷の下交渉は開始されました。言わば海舟・西郷会談の前座に過ぎないのすが、むろん、ただの前座ではありません。江戸をかけた、鉄舟一世一代の大交渉です。西郷の出した条件は、江戸城の明け渡しや武装解除などで、鉄舟はそれを受け入れました。ただし「将軍を備前藩に預ける」という条件だけは頑として受け入れず、西郷もそこは折れて棚上げにしました。それで交渉はまとまりました。
この下交渉は、幕府側から見れば完全なる成功と言えました。鉄舟は見事、役目を果たしたのです。西郷・勝の会談はまもなく行われ、江戸城無血開城は成し遂げられました。
なお、この件で活躍した勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟の三幕臣は、名前に舟の字がつくことから、「幕末の三舟」とも呼ばれています。

維新後の鉄舟は新政府に出仕しました。いくつかの地方ポストを経験し、その後、明治天皇に侍従として仕えています。
鉄舟の亡くなったのは1888年の7月19日。皇居に向かって座禅を組んだ姿勢をとり、「これから死ぬぞ」というような言葉とともに息絶えたと伝わります。

 
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