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れきたん歴史人物伝
れきたん歴史人物伝は、歴史上の有名人の誕生日と主な歴史的な出来事を紹介するコーナーです。月に一回程度の割合で更新の予定です。バックナンバーはこちらから(このページの最後にもまとめてあります)


9月号 2007年9月27日更新

【今月の歴史人物】
科学者として
ファラデー
1791.9.22〜1867.8.25

今月号のイラスト
ファラデー
◆科学タノシイ、ニコリファラッデ!
(C) イラストレーション:結木さくら


9月の主な誕生人物
01日アストン/物理学者
01日真山青果/小説家
02日伊藤博文/政治家
03日黒板勝美/歴史学者
04日ブルックナー/作曲家
05日ルイ十四世/フランス国王
06日ド−ルトン/化学者、物理学者
07日エリザベス1世/イギリス女王
07日嵯峨天皇/第52代天皇
08日ドヴォルジャーク/作曲家
09日リシュリュー/政治家
09日副島種臣/政治家
10日中橋徳五郎/政治家、実業家
10日バタイユ/思想家、評論家
11日後白河法皇/弟77代天皇
11日ノイマン/物理学者
12日アスキス/政治家
12日徳田球一/社会運動家
13日シューマン/ピアニスト
13日フンボルト/博物学者
14日太宰春台/江戸時代の儒者
15日朱子/学者
15日石田梅岩/心学者
15日岩倉具視/政治家
16日竹久夢二/画家
17日正岡子規/俳人、歌人
17日リーマン/数学者
18日横山大観/画家
18日土屋文明/歌人
19日アンリ3世/フランス国王
20日シンクレア/小説家
21日菱田春草/画家
22日ファラデー/物理学者
22日吉田茂/政治家
22日幸徳秋水/社会運動家
23日オクタヴィアヌス/ローマ帝国皇帝
24日ワレンシュタイン/軍人
24日フィッツジェラルド/小説家
25日石橋湛山/政治家
25日ケッペン/気候学者
26日ハイデガー/哲学者
26日エリオット/詩人
26日ガーシュイン/作曲家
27日ボシュエ/神学者、説教家
27日マハン/軍人、歴史学者
28日メリメ/小説家
28日クレマンソー/政治家
29日徳川慶喜/江戸幕府15弟将軍
29日ネルソン/軍人
29日フェルミ/物理学者
30日ガイガー/物理学者

今月ご紹介するのはイギリスの科学者・ファラデーの生涯です。日本においては「誰もが知っている」と言うほど有名ではないと思われますが、科学史上に残る素晴らしい発見を数多く成し遂げた人物です。しかし、彼の業績は研究や発見にとどまりません。科学というジャンルそのものに対する貢献も行った、非常に人柄のよい、人々に親しまれた科学者でもあったのです。

貧窮の中から
ファラデーは1791年9月22日、ロンドン近くのニューイングトンという町で、鍛冶屋の息子として誕生しました。一家の暮らしは貧しく、ファラデーは数年間の小学校教育を受けたのち、14歳にして製本屋の見習いとして働き始めます。
製本屋という職業に就けたことは、ファラデーにとって非常に幸運でした。製本屋では当然のことながら本を数多く扱います。貧しかったファラデーは本を手に入れることが難しかったでしょうが、製本屋を続ける中で数多くの本に接することが出来たのです。そして、ファラデーがもっとも興味を示したのは、もちろん科学の本でした。
ファラデーは忙しい合間を縫って、自分の得た科学知識をまとめたノートを作ります。それを見た店の客が、ある講演のチケットを提供してくれました。それは当時の大科学者、デイビーの講演会のチケットでした。
デイビーは後に王立協会(イギリス最古の学会・かのニュートンも会長をつとめた)の会長にまで上りつめる人物で、ナトリウムやカルシウムといった元素を発見するなどの大きな業績を残しています。
さて、デイビーの講演を聴いたファラデーは非常な感動を受け、科学の道を歩もうと決意します。ファラデーはデイビーへと手紙を送り、一度は断られたものの、一人の助手が辞職したことにより、とうとう新たな助手に採用されました。

史上希な発見
デイビーの助手となったファラデーは、デイビーに付いて科学者としての能力を高め、数々の大発見を成し遂げてゆきます。初期の成果として重要なものは、さまざまな金属の研究、電磁気回転現象の発見、塩素の液化の発見などがあります。これらはファラデーの名声を一気に高め、ファラデーは王立協会の会員に選ばれることとなります。ただの製本屋見習いが、誰からも尊敬される科学者として大きく羽ばたいたのです。これについて、師のデイビーはファラデーに対する嫉妬を抱いたと言われ、王立協会員への選出にも反対しました。とは言え、後に自分の最大の発見はファラデーであるという風に述べています。
その後ファラデーは王立研究所の実験所長にもなり、さらに大きな発見を次々と成し遂げます。電気分解における「ファラデーの法則」を発見し、「陽極」「陰極」「イオン」などの用語を定着させたのもファラデーです。そして今日、ファラデーの業績でもっとも有名なのは電磁気学分野における発見でしょう。特に電磁誘導の発見は不朽の功績であり、その後の電磁気学の発展に大きく貢献しています。「マクスウェルの方程式」により、近代の電磁気学を確立したマクスウェルの業績も、ファラデーの発見がなければ有り得なかったと言われます。

クリスマスの講演会
こうして押しも押されもせぬ大科学者となったファラデーでしたが、彼が科学研究以外にも残した大きな業績があります。それは「講演」でした。例えば、王立研究所実験所長として、おもに少年・少女たちに向けた「クリスマスの講演会」などを始めました。
実はファラデーは数学が苦手だったと言われます。著書にも数式はほとんど出てこないようです。しかしながら、その分、科学的な現象を直感的に理解し、実験によって確かめ、また、それを分かりやすい言葉で解説する能力に長けていました。その力が、講演には大いに活かされました。実験を交えたファラデーの講演に、科学者も一般人も夢中になったのです。
「クリスマスの講演会」で最も有名なのは「ロウソクの科学」という一連の講演です。ロウソクにかんする話を通して、化学の歴史や科学的な現象などについて講演したのです。ファラデー晩年の1861年に行われたこの講演は書物にまとめられ、現代でも読むことが出来ます。もちろん日本語にも訳されています。

偉大なる「科学者」
ファラデーは科学史における重大な発見を数多く成した天才でした。電磁気学におけるファラデーの業績は、現代文明の一面を支えていると言っても過言ではありません。しかしファラデーはそれ以上に、「科学者」として偉大な人物でした。貧しさの中から科学の道を志し、大科学者となってもあまり地位は好みませんでした。王立協会の会長に推された時もそれを断っています。
それでも、ファラデーが研究一辺倒の人嫌いで頑固な科学者ではなかったことは、「クリスマスの講演会」が指し示しています。少年・少女たちに科学の話を行うファラデーの瞳には、きっと少年の頃の自分の姿が映っていたことでしょう。
「ロウソクの科学」の約6年後、1867年8月25日にファラデーはこの世を去りました。ファラデーの始めた「クリスマスの講演会」は、現在も毎年クリスマスの時期に開催されています。

 


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